株式移転
株式移転とは、株式会社の発行済株式のすべてを、新たに設立する株式会社に取得させる組織再編の一種です(会社法第772条)。持株会社(ホールディングス)体制に移行する際に広く用いられる手法がこの株式移転という方法です。優星リーガル司法書士事務所では登記手続きのみならず、一連の手続きを一括して承っております。
株式移転の仕組み
株式移転は既存の株式会社を株式移転完全子会社、新たに設立される株式会社を株式移転設立完全親会社とする組織再編です。株式会社(株式移転完全子会社)が、その発行済株式のすべてを新たに設立する株式会社(株式移転設立完全親会社)に取得させます。株式移転完全子会社の株主には、既存の株式と引換えに株式移転設立完全親会社の株式を交付し、株式移転登記をすることにより株式移転完全親会社の株主となります。
株式移転が用いられる例
ホールディングス(持株会社)の設立として
複数の会社の株式を保有し、それらの会社を支配することを目的としたホールディングス(持株会社)の設立の方法として広く用いられています。1社のみの持株を目的として設立することも可能です。
M&A(企業の合併買収)の手法として
株式移転後の完全子会社は、株主が完全親会社1社のみとなるため、子会社の売却、合併等のM&Aをする際の手続きが容易となるメリットがあります。これらの手続きの前提として株式移転が用いられることがあります。
株式移転計画書
株式移転完全子会社は株式移転契約書を作成して、株主総会の承認を受けなければなりません。2社以上が共同して株式移転をする場合には、共同して株式移転計画書を作成し、各社が株主総会の特別決議で承認を受けなければなりません。
株式移転計画書では、株主移転設立完全親会社に関する次の事項を定めなければなりません。
- 商号、本店、目的、発行可能株式総数
- 設立時取締役
- 株式移転完全子会社の株主に交付する株式の数
- 資本金の額
株式移転の登記に必要な書類
株式移転の登記に必要な書類は次のものです。株式移転完全子会社と親会社の会社の機関設計によって必要な書類が異なる場合があります。
- 株式移転計画書
- 株式移転設立完全親会社の定款
- 株主総会議事録
- 設立時取締役の就任承諾書
- 資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面
- 設立時取締役の印鑑証明書
- 株式移転設立完全親会社の届出印
マークのある書類は当事務所で作成を承ります。
株式移転完全子会社によっては次の書類が必要となる場合があります。
- 株券提供公告をした官報
- 新株予約権提供公告をした官報
- 債権者保護手続きをしたことがわかる書面
株式移転の注意点
株式会社以外の会社はできません
株式移転設立完全親会社は株式会社でなければなりません。合同会社などの持分会社を設立会社とすることはできません。また、株式移転完全子会社についても、株式会社でなければならず、持分会社は株式移転完全子会社となることはできません。
債権者保護手続きが必要な場合があります
株式移転完全子会社については原則として債権者保護手続きを要しませんが、株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付し、完全子会社の社債が設立会社に承継される場合には債権者保護手続きをしなければなりません。
新株予約権提供公告が必要な場合があります
株式移転完全子会社が新株予約権を発行している場合、その新株予約権者に株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付するときは、新株予約権提供公告をしなければなりません。
株券提供公告が必要な場合があります
株式移転完全子会社が株券発行会社であり、かつ現実に株券を発行している場合には、株券提供公告をしなければなりません。
株式移転と資本金の額
株式移転設立完全親会社の資本金の額は、株主資本変動額の範囲内で計上します(会社計算規則第52条)。通常の設立と異なり、2分の1を資本金として計上しなければならないという規定はありません。設立会社は株主資本変動額を、資本金、資本準備金、その他資本剰余金のいずれかに自由に割り振ることができます。ただし、利益剰余金に割り振ることはできません。
2社以上が共同して株式移転する場合には、そのうち1社を基準企業と定め、パーチェス法(時価)で計算します。ただし、共通支配下にある株式会社の株式移転においては簿価で計算をする例外もあります。実際に資本金の額をいくらとするべきかは、税理士とよく相談して決めることが望ましいと言えます。
株式移転のスケジュール
株式移転の手続はおよそ次のスケジュールに沿って行なわれます。公告手続きを要する株式移転は、約2ヶ月程度かかります。公告手続きを要しない株式移転は、早くて1週間程度で手続きができます。ただし、株主総会の招集手続が省略または短縮できない株式会社においては、招集手続等に要する期間を考慮しなければなりません。
1.株式移転計画書の作成
株式移転計画書を作成します。2社以上の場合には共同して作成しなければなりません。
2.株主総会での承認決議
1で作成した株式移転計画書を株主総会の決議で承認を受けます。
3.各種公告手続き
債権者保護手続き、株券提供公告、新株予約権提供公告が必要な場合にはこれらの公告を行います。これら公告の期間は最低1ヶ月を要します。
4.登記申請をいたします
株式移転においては登記申請した日が効力発生日となります。あらかじめ効力発生日を任意の日としたいときは、その日にあわせて登記申請をします。
5.完了後の書類をお渡しいたします
登記申請後約1週間~10日で登記が完了いたします。完了後ご連絡をいたしますので、書類の受領をお願いいたします。郵送での返却も可能です。
登録免許税
株式移転登記の登録免許税は、株式移転設立完全親会社の資本金の額によって次のとおりとなります。(登録免許税法別表第一第二十四号(一)イ)
登録免許税 = 資本金の額 × 1000分の7※
※この額が150,000円に満たない場合は、登録免許税は150,000円となります。
報酬及び費用
株式移転手続に要するおもな費用や報酬は次のとおりです。
手続名等 | 報酬 | 登録免許税等 | 備考 |
---|---|---|---|
株式移転登記登記申請 | 88,000円~ (消費税込) |
150,000円~ | ※ |
株式移転計画書作成 | 22,000円~ (消費税込) |
登記とあわせてご依頼いただく場合の価額です。 | |
議事録作成 | 5,500円~ (消費税込) |
※報酬は株式移転完全子会社が1社の額です。2社以上は1社ごとに22,000円(消費税込)を加算します。また、株式移転設立会社の資本金が1,000万円を超えるときには、報酬額を加算させていただきます。登録免許税は最低額です。